
自費診療が伸びない医院の共通点
説明の仕方を変えても、資料を作り直しても、自費が伸びない。原因は話し方ではなく、患者が選ぶまでの道筋が設計されていないことにあります。
この記事の要点
- 自費が伸びない原因は価格ではなく、勧める理由が言葉になっていないこと
- 説明の時間を増やしても、判断材料が増えなければ決まらない
- 誰に何を勧めるかを先に決めると、説明は短くなる
顧客が買っているのは、製品ではなく価値である。
患者が選んでいるのは治療法そのものではなく、その先にある生活です。素材の説明を尽くしても決まらないのは、価値の説明になっていないからです。
「説明が下手だから」ではない
自費が伸びないとき、多くの医院がまず説明の技術を疑います。話法の研修を受け、資料を作り直す。一時的に数字が動くことはありますが、多くは元に戻ります。
患者が自費を選ばない理由は、説明が分からなかったからだけではありません。選ぶ理由が自分にとって腑に落ちなかった、決めるための時間がなかった、そもそも相談できる相手だと思えなかった。どれも説明の技術の外側にあります。
技術を磨くことは無駄ではありません。ただし、その手前にある道筋が欠けていると、技術だけでは埋まりません。
価格以外の理由を言葉にできているか
自院の自費が選ばれる理由を、価格以外で3つ挙げられるでしょうか。設備、技術、通いやすさ、説明の丁寧さ。どれも候補になりますが、他院も同じことを言えるものは理由になりません。
理由になるのは、自院にしかない条件か、他院より明らかに踏み込んでいる点です。それが言葉になっていないと、患者にとって判断材料は価格だけになります。価格だけで比べられると、安いほうが選ばれます。
ここを曖昧にしたまま単価を上げると、患者は離れます。逆に理由が明確なら、価格は判断のひとつの要素に過ぎなくなります。
誰がいつ話すかが決まっていない
自費の説明を院長だけが行っている医院では、話す機会そのものが限られます。院長の診療時間は有限だからです。
伸びている医院では、最初の入口を歯科衛生士やトリートメントコーディネーターが担い、判断に近いところで院長が話す形になっていることが多くあります。誰がどこまで話すかが決まっていれば、説明の総量が増えます。
ただし役割を渡すには、話す内容の基準が要ります。基準がないまま任せると、人によって説明が変わり、患者は混乱します。任せることと放置することは違います。
判断に必要な時間を渡していない
高額な治療を、その場で決めさせようとしていないでしょうか。家族に相談したい、費用の都合を考えたい。当然の反応です。
その場で決まらないことを前提に、持ち帰るための材料を渡し、次にいつ話すかを決めておく。この流れがないと、迷った患者はそのまま来なくなります。断られたのではなく、決める機会を失っただけということが起きています。
検討のための時間を設計に入れることは、押しを弱めることではありません。決めやすくすることです。
自費率は目的ではない
自費率を目標に置くと、現場に無理が生まれます。数字を追うために必要のない提案が増え、患者との信頼が損なわれれば、長期では逆効果になります。
自費率は結果として見る指標です。追うべきは、提案できた件数、検討の時間を渡せた件数、その後に再来した件数。過程の数字を見れば、どこで止まっているかが分かります。
結果の数字だけを見ていると、原因が分からないまま声がけだけが厳しくなります。これが現場の疲弊につながります。
伸びる医院がやっていること
共通しているのは、選ばれる理由が言葉になっていること、説明の役割が分かれていること、そして検討の時間が流れに組み込まれていることです。
いずれも話法ではなく設計です。設計は一度つくれば積み上がります。人が変わっても残るのは、この部分です。
自費を伸ばしたいと考えたとき、まず見るべきは説明の中身ではなく、患者が決めるまでにたどる道のりのほうです。
よくあるご質問
自費率の目安はありますか?
地域と診療内容で大きく変わるため、他院との比較にはあまり意味がありません。自院の前年との比較と、勧めた件数に対する成約率を見てください。
価格を下げれば決まりますか?
下げた分だけ利益が減り、次の投資ができなくなります。決まらない理由が価格であることは、実際には多くありません。
カウンセリングの時間を増やすべきですか?
時間より順番です。何を勧めるかを決めてから話すと、短い時間でも伝わります。
この記事のまとめ
- 自費が伸びない原因は、説明の技術より前にある道筋の欠落
- 価格以外で選ばれる理由を3つ言葉にできているかを確かめる
- 説明の役割を分けると総量が増える。ただし基準を渡してから任せる
- その場で決まらない前提で、検討の時間と次の接点を設計する
- 自費率は結果指標。提案件数や再来件数など過程の数字を見る
この論点を体系的に扱うのはマーケティング論です。
