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役割分掌のつくり方

仕事の一覧に担当が割り当てられ、一行だけ担当が空いている表の図

滅菌器の管理を誰がやっているか、すぐに答えられるでしょうか。在庫の発注は。求人票の作成は。こうした仕事は診療の合間に誰かがやっていることが多く、組織図には現れません。そして、その人が辞めた日に止まります。役割分掌とは、仕事に名前をつける作業です。

この記事の要点

  • 組織図に現れない仕事が、医院を止める
  • 棚卸しは仕事から。人から考えると抜ける
  • 主担当は必ず一人。二人に丸をつけない

測定できないものは管理できない。

ピーター・F・ドラッカー経営学者

この言葉は数字の話として引かれることが多いのですが、仕事そのものにも当てはまります。誰がやっているか分からない仕事は、量も質も測れません。測れないものは、増えても減っても気づけません。役割分掌表は、仕事を見える形に置き直す作業です。

なぜ名前のない仕事が生まれるか

開業したばかりの頃は、院長がすべてをやります。人が増えるにつれて、手が空いている人がその都度引き受けていきます。悪いことではありません。そうやって医院は回ってきました。

問題は、引き受けた記録がどこにも残らないことです。本人だけが知っている仕事になります。五年経つと、誰も全体像を把握していない状態になります。

この状態は、その人がいる限り表に出ません。辞める、産休に入る、体調を崩す。そのときに初めて、名前のない仕事があったことが分かります。

役割分掌をつくる目的は、管理を厳しくすることではありません。誰かが抜けても続く状態にすることです。

仕事から棚卸しする

最初にやるのは棚卸しです。ここで順番を間違えないでください。人からではなく、仕事から始めます。

人から始めると、「Aさんの仕事」を書き出すことになり、誰もやっていない仕事が最後まで出てきません。仕事から始めれば、担当が空いている行が自然に残ります。

書き出し方は単純です。一日の流れに沿って、朝の開院準備から閉院後の片付けまでを順に並べます。次に、月に一度の仕事、年に一度の仕事を足します。レセプト、健診、機器の点検、求人。

このとき、一行が一つの仕事になる粒度で書いてください。「受付業務」では粗すぎます。「電話予約の受付」「保険証の確認」「会計と釣り銭の管理」まで分けると、抜けが見つかります。最初は30行から50行になります。

スタッフに書いてもらうのがいちばん速い方法です。自分がやっていることを一週間書き出してもらうと、院長が把握していなかった仕事が必ず出てきます。

役割分掌表の例。仕事ごとに主担当・副担当・決めてよい範囲が並び、一行だけ担当が空いている
担当が空いている行が、必ず一つか二つ見つかります。

主担当は一人にする

棚卸しができたら、行ごとに主担当を決めます。ここで守っていただきたいことが一つあります。主担当は必ず一人にすることです。

二人に丸をつけると、両方が「相手がやる」と考えます。掃除や片付けのような仕事ほど、この現象が起きます。誰の仕事でもない状態は、二人の仕事にした瞬間に生まれます。

副担当は置いて構いません。主担当が休んだときに動ける人、という意味です。ただし副担当は「代わりに入る人」であって、「一緒にやる人」ではありません。

決め方に迷ったら、いちばん近くでその仕事を見ている人にします。役職で決めると実態と合わなくなります。

決めてよい範囲も同じ表に書く

担当を決めただけでは、確認がなくなりません。その行で決めてよい範囲を、同じ表に書いてください。

「材料・器材の発注/主担当 チーフ/月10万円まで」。この一行で、チーフは10万円以内なら院長に聞かずに発注できます。超えるときだけ相談に来ます。

範囲を書くのは、渡す側を守る仕組みでもあります。書いていないことが起きたときに、誰が決めるかがはっきりするからです。

この列があると、役割分掌表は組織図と地続きになります。組織図の箱に書いた内容を、行単位まで細かくしたものが役割分掌表です。

担当が空いた行の扱い

表をつくると、必ず担当が決まらない行が出てきます。ここが、この作業のいちばんの収穫です。

空いた行には三つの道があります。誰かに渡す、やめる、外に出す。

まず、やめられないかを考えてください。長年続いているだけで、いま必要か確かめていない仕事があります。手書きの帳簿、誰も見ていない日報。やめれば、担当を決める必要がなくなります。

次に、外に出せないか。記帳、給与計算、ホームページの更新。専門の会社に出したほうが速く正確な仕事は少なくありません。

それでも残ったものを、誰かに渡します。このとき、その人の既存の仕事から何かを外してください。足すだけだと、その人が次に抜ける人になります。

表を置く場所と、見直す時期

完成した表は、スタッフルームに貼ってください。同じものを共有フォルダにも置きます。見えないところにしまうと、決めた意味がなくなります。

見直しは年に一度で足ります。ただし、人が入れ替わったとき、新しい診療を始めたとき、機器を入れ替えたときは、その都度その行だけ直します。

新しく入った人には、この表を最初に渡してください。自分の仕事の範囲が初日に分かることは、思っている以上に安心につながります。

役割分掌表は、管理のための書類ではありません。誰かが抜けても医院が続くための、いちばん基本的な備えです。

よくあるご質問

役割分掌表はどのくらいの粒度で書きますか?

一行が一つの仕事になる粒度です。「受付業務」では粗すぎます。「電話予約の受付」「保険証の確認」まで分けると抜けが見つかります。

主担当と副担当は必要ですか?

主担当は必ず一人にします。二人に丸をつけると、両方が相手がやると考えます。副担当は、休んだときに動ける人という意味で置きます。

決めた分掌はどこに置きますか?

スタッフルームに貼り、同じものを共有フォルダに置きます。見えないところに置くと、決めた意味がなくなります。

萩原 直樹

この記事を書いた人

萩原 直樹経営学修士(MBA)/デンタルMBA 講座総括

歯科医院の経営を支える専門家として、全国の医院の経営支援に従事。戦略設計から組織構築、財務改善まで、経営の全体最適を支援する。支援実績40医院。

この記事のまとめ

  • 組織図に現れない仕事が、担当者の退職で医院を止める
  • 棚卸しは人からではなく仕事から。一日の流れに沿って並べる
  • 一行が一つの仕事になる粒度で書く。30行から50行になる
  • 主担当は必ず一人。二人に丸をつけると誰もやらなくなる
  • 決めてよい範囲を同じ表に書くと、確認が減る
  • 担当が空いた行は、やめる・外に出す・渡すの順で考える

この表を自院の組織図とつなげて考えるのが組織設計論です。2027年1月31日(日)に開催します。

判断の質を上げることが、医院の未来を守る。

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