
「よろしいですか?」ではなく「よろしいです」と言っていただく
こんにちは。デンタルMBAの萩原直樹です。
今回は、患者さんへの説明についてのお話です。
「聞いていません」
治療が3回目に入ったところで、その患者さんは言った。
「神経を取るなんて、聞いていません」
説明した本人は、カルテを開いて絶句した。初診のときに、たしかに話している。資料も渡している。文字で書いてある。
「ご説明しましたよね」
言ってしまってから、しまった、と思った。患者さんの表情が変わったのが分かった。
その日の夜、院内の会議でこの件を取り上げた。誰が悪いという話にはしたくなかった。
「あのとき、患者さんは何とおっしゃっていましたか」
担当した歯科衛生士は、少し考えてから答えた。
「……『はい』と」
「それだけですか」
「はい、とうなずかれて。それで、よろしいですねと確認して、終わりました」
院長が、ぽつりと言った。
「うなずいただけ、ってことか」
※ 実際にうかがったお話をもとにした物語です。医院名・人物名は変えています。
「よろしいですか?」と聞くと、うなずいて終わります
説明の最後に、こうお尋ねになると思います。
「こちらで進めてよろしいですか?」
患者さんは、うなずきます。あるいは「はい」とおっしゃる。
これで同意が取れた、と思ってしまいます。しかし、ここが危ないのです。
診療室で白衣の方に「よろしいですか」と聞かれて、「いえ、よく分かりません」と言える方は、そう多くありません。分かっていなくても、うなずきます。悪気はありません。その場の空気がそうさせます。
言っていただく言葉を、変えてみる
そこでこの医院では、言い方を変えました。
「それでは、ご自身の言葉で確認させてください。今日はどこまで進める、ということでよろしいですか」
患者さんが、ご自身の言葉で説明し直す。
「右の奥歯を、まず神経の治療から始める。それが終わってから、かぶせ物の相談をする」
ここまで言っていただいて、初めて同意です。
言えなければ、伝わっていないということです。もう一度、別の言い方で説明します。これは患者さんの理解力の問題ではなく、こちらの説明の問題だと考えます。
すれ違いは、たいてい同じところで起きます
実際にすれ違った場面を集めてみると、だいたい決まっています。
- 今日やることと、次回やることの境目
- 治療にかかる回数と期間
- いまの金額に、何が含まれていて何が含まれていないか
- 治療をしなかった場合に、どうなるか
この4つは、必ず患者さんの言葉で確認していただく。そう決めるだけで、あとのトラブルがかなり減ります。
練習しないと、できません
ここが大事なところです。
「患者さんの言葉で確認する」と決めても、現場ではできません。相手を試しているようで、言いにくいのです。だから結局「よろしいですか」に戻ってしまう。
ですから、練習してください。
この医院では、実際の説明を録音し、チームで聞いています。上手な方の録音を、そのまま教材にする。文章のマニュアルを作るより、ずっと早く身につきます。
録音するときは、患者さんに必ずお伝えします。キャンセルの決まりを書いた紙と同じように、「記録のために録音させていただきます」と一文添えておけば、嫌な顔をされることはほとんどありません。
説明の質を、個人の感覚に任せない
説明がうまいスタッフがいる。これは医院の財産です。
けれど、その方の感覚のままにしておくと、医院の財産にはなりません。その方が辞めた日に、全部なくなってしまいます。
うまくいっている説明を、録って、聞いて、真似る。 地味ですが、これがいちばん確実です。
そして何より、「聞いていません」と言われて絶句する時間が、なくなります。
マーケティング論を、体系立てて学ぶ
こうした考え方を半日かけて扱うのが、デンタルMBAの「マーケティング論」です。2027年6月6日に横浜で開催します。院長先生だけでなく、主任やチーフ、事務長の方もご一緒に受講いただけます。
