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セカンドラインの育て方

セカンドラインが空いている組織図と、三人に育った組織図の比較

組織図を描いたのに機能しない。この相談の原因は、たいてい一つです。箱に入る人がいないのです。院長の次に判断できる層をセカンドラインと呼びます。この層が薄いまま図だけ描いても、判断は院長に戻り続けます。

この記事の要点

  • セカンドラインは、院長の次に決める層
  • 渡す順番は、仕事・判断・人・数字
  • 候補は技術の高さではなく、人に聞けるかで見る

人を管理する能力、模範となる能力、目的意識をもたせる能力は、修得できる。

ピーター・F・ドラッカー経営学者

ドラッカーは、マネジメントは才能ではなく修得できる技能だと述べました。セカンドラインが育たない医院では、候補の資質を探し続けていることがあります。しかし探すべきは人ではなく、渡す順番です。修得できるものである以上、渡し方さえ設計すれば、いまいる人の中から育ちます。

セカンドラインとは何をする人か

セカンドラインは、役職名のことではありません。主任でもチーフでも副院長でも構いません。院長がいなくても、その日の運営が止まらない。それを担う層をそう呼んでいます。

具体的には、日々の判断がここで完結します。シフトをどう組むか、材料をいつ頼むか、新人に何をやらせるか。これらが院長を経由せずに決まる状態です。

院長が持つのは、投資と採用と方向だけになります。そこまで来ると、院長は診療から離れる時間をつくれます。

この層がいない医院では、役職があっても実態は伝達係です。決めているのは院長で、役職者は伝えているだけ。本人もそれを分かっているので、やりがいが生まれません。

渡す順番を間違えると潰れる

育てる順番には型があります。仕事、判断、人、数字。この順です。

仕事を渡す。まず手を動かす範囲を広げます。ここは多くの医院ができています。

判断を渡す。決めてよい範囲を金額や時間で決めます。ここで止まっている医院がいちばん多い段です。

人を渡す。評価と面談を持たせます。採用の一次面接もここに入ります。人が動かせるようになると、本人の見える範囲が一段広がります。

数字を渡す。最後に、担当範囲の数字を見せます。順番を飛ばして先に数字だけ見せると、責任だけ増えて動かせない状態になります。数字は、人を動かせるようになってから渡します。

セカンドラインに渡す順番を四段階で示した図
三番目を飛ばすと、数字だけ見せられて動かせない状態になります。

候補をどう見立てるか

候補選びでいちばん多い間違いは、技術がいちばん高い人を選ぶことです。

技術と、人を動かす力は別の能力です。腕のよい人が必ずしも人に教えられるとは限りません。むしろ、自分でできてしまう人ほど任せるのが苦手なことがあります。

見るべきは、人に聞ける人かどうかです。分からないことを分からないと言える人は伸びます。周りに助けを求められる人は、任せる範囲が広がっても壊れません。

もう一つ、自分の失敗を隠さない人。隠す人に人を任せると、問題が見えなくなったときに大きくなります。

本人が望んでいるかも確かめてください。診療だけをしたい人に役職を渡すと、本人にとっても医院にとっても不幸になります。

一人にしない

セカンドラインは、できれば二人以上つくってください。一人だけだと、その人が辞めた日に医院が元に戻ります。

一人に集中すると、本人の負荷も上がります。相談できる相手が院長しかいない状態は、思っているより孤独です。同じ立場の人がもう一人いると、互いに確認し合えます。

スタッフ20名までなら、二人から三人が目安です。ドクター側とスタッフ側で一人ずつ、という分け方がよく合います。

一人しか候補がいない場合は、その人を育てながら、二人目の候補に仕事を少しずつ渡しはじめてください。

育たない医院に共通すること

育たない医院には、はっきりした共通点があります。院長が答えを出すのが速いことです。

相談が来たとき、院長は数秒で答えられます。相手も助かります。しかしそれを続けるかぎり、相手は考える機会を失います。育てる期間だけは、答えずに「どう考えたか」を先に聞いてください。

二つ目は、失敗したときに取り上げてしまうこと。一度取り上げられると、二度と自分から決めなくなります。

三つ目は、育てる時間を予定に入れていないこと。面談を月に一度、三十分。これを予定表に固定していない医院では、忙しさに押されて必ず流れます。

一年後に何が変わるか

一年続けると、院長のところに来る相談の量が目に見えて減ります。半分以下になる医院が多いという実感です。

減った時間で何をするかを先に決めておいてください。空いた時間に診療を入れてしまうと、元の状態に戻ります。経営を考える時間、外を見る時間、次の人を育てる時間。ここに充てると、次の一年がさらに楽になります。

そして、セカンドラインが育った医院は、分院を出す選択肢も、承継の選択肢も持てるようになります。どちらも、院長以外に決められる人がいることが前提だからです。

よくあるご質問

セカンドラインは何人必要ですか?

スタッフ20名までなら2名から3名が目安です。一人だけだと、その人が抜けたときに元に戻ります。

候補はどう見立てればよいですか?

技術の高さではなく、人に聞ける人かどうかで見ます。分からないことを分からないと言える人は伸びます。

育つまでにどれくらいかかりますか?

一年から二年です。三か月では変わりません。三年かけても変わらないなら、渡す順番が違うか、本人が望んでいない可能性があります。

萩原 直樹

この記事を書いた人

萩原 直樹経営学修士(MBA)/デンタルMBA 講座総括

歯科医院の経営を支える専門家として、全国の医院の経営支援に従事。戦略設計から組織構築、財務改善まで、経営の全体最適を支援する。支援実績40医院。

この記事のまとめ

  • セカンドラインは役職名ではなく、院長の次に決める層のこと
  • 渡す順番は、仕事・判断・人・数字。飛ばすと本人が潰れる
  • 候補は技術の高さではなく、人に聞ける人かどうかで見る
  • 一人にしない。二人以上いると、辞めたときに戻らない
  • 育たない医院は、院長が答えを出すのが速すぎる
  • 空いた時間の使い道を先に決めておかないと、元に戻る

この層の育て方を組織図に落とし込むのが組織設計論です。2027年1月31日(日)に開催します。

判断の質を上げることが、医院の未来を守る。

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