
承継を見据えて50代で整えること
引退はまだ先でも、承継の準備は早いほど選択肢が多くなります。50代で整えておくことと、60代になってからでは間に合わないことがあります。
この記事の要点
- 承継の準備は、引き継ぐ相手が決まる前から始められる
- 院長個人に紐づいた関係と判断を、医院の資産に移していく
- 50代で整えるべきは、数字・人・仕組みの3つ
企業の寿命は、経営者の寿命より長くなければならない。
松下幸之助は、事業を人に依存させないことを繰り返し説きました。承継とは、院長がいなくても続く形に医院を移す作業です。
承継は出口ではなく設計
承継というと、引退の直前に考えることと思われがちです。しかし実際には、承継しやすい医院をつくる過程そのものが、日々の経営を強くします。
誰かに渡せる状態とは、院長個人に依存せず回る状態のことです。これは分院展開の条件とも、院長が倒れたときに続く条件とも重なります。つまり承継の準備は、いま医院を安定させることと同じ方向を向いています。
だから、引退の予定がなくても着手する意味があります。
院長に依存した医院は渡せない
患者が院長個人についている。技術も判断も院長の頭の中にある。この状態の医院は、渡した瞬間に価値が下がります。承継を受ける側もそれを知っているので、条件は厳しくなります。
渡せる形にするには、診療の基準を言葉にし、判断を他の人にも渡し、患者との関係を医院としての関係に変えていく必要があります。これには数年かかります。
逆に言えば、数年かければ変えられます。だからこそ50代での着手に意味があります。
数字が見えない医院は評価されない
承継の場面では、医院の価値が数字で評価されます。売上と利益の推移、患者数の構成、設備の状態、借入の残高。
これらが整理されておらず、院長の記憶の中にしかない医院は、評価が下がります。相手は不確実性を割り引くからです。日ごろから数字を整理し、説明できる状態にしておくことが、そのまま条件につながります。
数字の整理は、承継のためだけの作業ではありません。いまの判断のためにも必要なものです。二重の意味で早く始める価値があります。
承継先の3つの選択肢
承継先は大きく3つです。親族へ渡す、勤務医など内部の人へ渡す、外部の第三者へ渡す。
親族に渡す場合でも、経営を引き継ぐ準備は別に必要です。歯科医師としての技術があることと、医院を経営できることは別だからです。内部の人に渡す場合は、その人が経営を学ぶ期間と、資金の手当てが要ります。
第三者に渡す場合は、条件が最も数字で決まります。どの道を選ぶにしても、準備を始める時期が早いほど、選べる幅は広くなります。
早く始めるほど選べる
準備が遅れると、選択肢は減ります。体調や年齢の都合で時間がなくなると、条件を選べなくなるからです。
一方、十分な時間があれば、複数の道を並行して検討できます。内部の候補を育てながら、外部の可能性も見ておく。どちらかが難しくなっても、もう一方が残ります。
承継で苦労する例の多くは、準備の不足ではなく、着手の遅れから来ています。
50代で着手すること
具体的には4つです。院長が抜けても回る体制をつくること。数字を整理し、毎年の推移を説明できるようにすること。承継先の候補を考え始めること。そして、自分が何歳でどうしたいかを言葉にすること。
最後のひとつが意外と難しく、しかし最も大事です。ここが決まらないと、他の3つの期限が決まりません。期限のない準備は進みません。
引退の時期を決めることと、引退することは別です。決めておけば、そこから逆算して、いま何をすべきかが見えます。
よくあるご質問
承継の準備はいつから始めるべきですか?
引き継ぐ相手が決まっていなくても、50代のうちに始められます。数字の見える化と権限の整理は、相手が誰でも必要です。
子どもが継がない場合はどうなりますか?
第三者承継やM&Aという選択肢があります。いずれの場合も、院長個人に依存しない状態のほうが評価されます。
何から手をつければよいですか?
院長しか知らない情報の洗い出しからです。取引先との関係、価格の決め方、患者ごとの経緯。まず書き出すことが第一歩です。
この記事のまとめ
- 承継の準備は、そのまま医院を安定させる作業と重なる
- 院長個人に依存した医院は渡しにくく、評価も下がる
- 数字が整理され説明できる状態は、そのまま承継の条件につながる
- 承継先は親族・内部・第三者の3つ。早く始めるほど選べる幅が広い
- 50代で決めるべきは、自分が何歳でどうしたいかという期限
この論点を体系的に扱うのはデンタルMBAとはです。
