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独学でどこまで行けるか

知っている・自院に当てはめた・動かした、の三段階と段差を示した図

経営の勉強を独学で進めたい、という方は多くいらっしゃいます。実際、本と動画だけでもかなりのところまで行けます。ただし、行けるところとそうでないところがはっきり分かれます。その境目を先に知っておくと、独学の時間の使い方が変わります。

この記事の要点

  • 知っている/自院に当てはめた/動かした、の三段階がある
  • 本が確実に届くのは一段目まで。二段目からは段差がある
  • 独学で行けるところまで行ってから外に出ると、得るものが変わる

知識は、行動に転化されて初めて成果となる。

ピーター・F・ドラッカー経営学者

読んだだけで分かった気になるのは、経営書を読む人がほぼ全員通る道です。ドラッカーはそれを戒めました。本を読む価値がないという意味ではありません。読んだあとに一つ動かすところまでを、勉強のひとまとまりとして数えるべきだという意味です。

三つの段階に分けて考える

経営を学ぶという言葉は、実は三つの違う段階を指しています。

一段目は知っている。人件費率という言葉を知っていて、適正な範囲もだいたい分かる。この段階です。

二段目は自院に当てはめた。自院の人件費率を計算し、適正と言われる範囲と比べ、高いなら何が押し上げているのかまで見た。ここまで来ると、知識は自院の言葉になります。

三段目は動かした。当てはめた結果をもとに、シフトを組み直す、役割を変える、採用計画を見直すといった手を打ち、翌月の数字を確認した。

独学の話をするとき、多くの方は一段目のことを考えています。しかし医院が変わるのは三段目です。そして一段目と二段目のあいだ、二段目と三段目のあいだには、それぞれはっきりした段差があります。

本で足りること

最初にお伝えしたいのは、本で足りることは想像より多いということです。

用語と考え方を知ること。これは本がいちばん効率的です。セミナーで同じ話を聞くより、一冊読むほうが速く、安く、何度でも戻れます。

決算書の読み方の基礎も本で十分です。損益計算書のどこを見るか、貸借対照表の何が危険信号か。この程度なら、歯科向けでなく一般の入門書でも足ります。

他業種を含めた事例の引き出しも、本のほうが広く取れます。セミナーで聞ける事例は多くて数件ですが、本なら一冊で何十件も入っています。

そして意外に大きいのが、自分の課題を言葉にできるようになることです。「なんとなくうまくいっていない」が「セカンドラインが育っていない」に変わる。この変換ができると、次に何を調べればよいかが分かります。

ここまでは、独学で確実に届きます。

本で足りることと、本では届きにくいことを並べた整理図
独学が向かないのではありません。境目を知っておくと、外に出る時期を間違えずに済みます。

本では届きにくいこと

一方で、本では届きにくいものもはっきりしています。

一つ目は自院の数字に当てはめる作業です。本には一般論しか書けません。自院の人件費率が34パーセントだったとして、それが高いのか妥当なのかは、医院の規模、自費の比率、訪問診療の有無、常勤と非常勤の構成で変わります。この判断は、本の文章からは出てきません。

二つ目は条件が違うときの判断です。本に書かれた前提と自院の条件がずれたとき、どこまでなら同じ考え方が使えて、どこからは使えないのか。ここでつまずくと、本の内容をそのまま持ち込んで失敗するか、使えないと判断して捨てるかのどちらかになります。

三つ目は「これで合っているか」の確認です。独学の最大の弱点はここです。間違った理解のまま半年進んでも、誰も教えてくれません。

四つ目は続ける仕組み。読んだ直後はやる気になりますが、二週間で日常に戻ります。次の予定が入っていないからです。

五つ目は同じ立場の人からの視点です。同じ規模の医院の院長が何に困っていて、どう考えたか。これは本には載りません。載っているのはうまくいった話だけです。

独学を効かせる三つのやり方

独学の効率は、やり方でかなり変わります。三つお伝えします。

一つ目、読んだら一つだけ自院の数字で試す。一冊読んで十のことを覚えるより、一つを自院で計算してみるほうが残ります。計算してみると、たいてい本のとおりにいきません。そのずれが、自院の条件を教えてくれます。

二つ目、結果を書き残す。試したこと、出た数字、思ったこと。三行で構いません。半年ためると、自分の医院の癖が見えてきます。これは他のどこからも手に入らない資料になります。

三つ目、次の予定を先に入れる。読み終わった日に、一か月後の予定表に「振り返り30分」と書いておく。続かないのは意志の問題ではなく、予定が入っていないからです。

この三つをやると、独学の到達点は一段上がります。二段目、自院に当てはめるところまでは、独学でも届くようになります。

外に出るタイミング

では、いつ外に出るか。二つの兆候が目安になります。

一つ目は、何を調べればよいかは分かるのに、決められないとき。情報は集まっているのに判断がつかない。これは知識ではなく、判断の基準が足りていない状態です。基準は、自分より先を行っている人と話さないと手に入りません。

二つ目は、やると決めたことが三回続けて流れたとき。意志の問題ではありません。一人で決めて一人で実行する形に無理があります。外に出て、期日のある場に身を置くほうが早く解決します。

なお、独学が無駄になることはありません。一段目を独学で済ませておくと、講座や研修で扱える内容が一段深くなります。用語の説明に時間を取られず、最初から自院の話ができるからです。

順番としては、本で行けるところまで行く。そのうえで、判断の基準と続ける仕組みだけを外に取りに行く。これがいちばん費用対効果が高い進め方だと考えています。

学ぶ順番そのものについては歯科医院経営は、何から学ぶかに、セミナーの選び方は歯科医院の経営セミナーの選び方に書きました。

よくあるご質問

本を何冊読めばよいですか?

冊数より、一冊を自院に当てはめてみるほうが効きます。読んだあとに自院の数字で一つ試し、結果を書き残す。これを三冊分やれば、十冊流し読みするより深く残ります。

歯科以外のビジネス書は役に立ちますか?

役に立ちます。組織や財務の考え方は業種を問いません。ただし他業種の事例をそのまま持ち込むと合わないので、考え方だけを取り出して自院の条件に当てはめてください。

独学と講座を併用してもよいですか?

その組み合わせがいちばん効率的です。用語と考え方を本で押さえておくと、講座で扱える内容が一段深くなります。

動画やセミナーの録画でも同じですか?

本より入りやすい反面、手が止まりやすい面があります。見たあとに自院の数字で一つ試すところまでを一組にすれば、本と同じだけ残ります。

この記事のまとめ

  • 経営の学びには、知っている/当てはめた/動かした、の三段階がある
  • 本が確実に届くのは一段目まで
  • 読んだら一つ試し、書き残し、次の予定を入れる
  • 判断がつかない、三回流れた。このときが外に出る合図

独学のあとに何を取りに行くかは、講座の内容をご覧ください。全12講座を見る

萩原 直樹

この記事を書いた人

萩原 直樹経営学修士(MBA)/デンタルMBA 講座総括

歯科医院の経営を支える専門家として、全国の医院の経営支援に従事。戦略設計から組織構築、財務改善まで、経営の全体最適を支援する。支援実績40医院。

判断の質を上げることが、医院の未来を守る。

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