
自費率30%を目指す、の「30」はどこから来ましたか
こんにちは。デンタルMBAの萩原直樹です。
今回は、目標の数字のお話です。
医院にうかがって経営の話になると、だいたいこういう数字が出てきます。
「今期は自費率30%を目指しています」
よい目標だと思います。ただ、そのあとに必ずおうかがいしていることがあります。
その「30」は、どこから来ましたか。
ここで答えが出てくる医院は、正直あまり多くありません。去年が25%だったから、という答えか、どこかの本に書いてあったから、という答えが返ってきます。
数字を決めること自体は、むずかしくありません
自費率、リコール率、キャンセル率、1人あたりの売上。見るべき数字の名前は、いくらでも挙がります。
本にも載っていますし、同業の集まりに行けば「うちは◯%です」という話も聞けます。だから数字を置くこと自体は、そんなにむずかしくない。
むずかしいのは、「なぜその数字なのか」を自分の言葉で言えるようにすることです。
ここが決まっていないと、数字は目標ではなく、ただの願望になります。願望は、達成できなくても誰も困りません。だから追いかけられないまま1年が終わります。
目標の数字は、利益から逆算して決める
では、どう決めるか。
私は、その数字を達成したときに、いくら残るのかから考えていただくようにしています。
順番はこうです。
1. 来年、医院にいくら残したいか(院長の報酬、設備の積み立て、借入の返済)
2. そのためには、いくらの利益が必要か
3. その利益を出すには、どの診療を、いくらぶん増やす必要があるか
4. それを割合に直すと、何%か
この順番で出した「30」なら、答えられます。設備の入れ替えに◯◯万円いるから、だから30なのだと。
逆から来た「30」は、どこまでいっても説明がつきません。
売上が伸びても、お金が残らないことがあります
ここで、いちばん見落とされやすい点をお伝えします。
自費が伸びても、利益は同じようには伸びません。
わかりやすいのが矯正です。インビザラインのような治療は、1症例あたりの金額が大きい。売上の数字はきれいに伸びます。自費率も上がります。院内の雰囲気もよくなります。
ところが、原価が一緒に上がっています。
インビザラインの原価率は、25%前後になっている医院が多いというのが実感です。100万円の症例なら、25万円。装置の代金と技工料を合わせた数字です。けっして小さくありません。
そして、この25%にはリテーナーが入っていません。スキャナーの償却も入っていません。 どちらも必ずかかるものです。それを足せば、実際の原価はもう一段上がります。
保険診療の感覚でいると、ここは見えません。100万円の治療が決まったと思っていても、手元に残る話は75万円を下回ったところからのスタートです。そこから人件費も家賃も出ていきます。
自費が伸びているのに、思ったほど残らない。悪いのは治療ではありません。見ている数字が、売上で止まっているだけです。
診療ごとに、残る金額を出してみる
一度、自院の主な診療について、こう並べてみてください。
| | 1件あたりの売上 | 1件あたりの原価 | 残る金額 | かかる時間 |
| --- | --- | --- | --- | --- |
| 診療A | | | | |
| 診療B | | | | |
原価には、材料と技工料だけでなく、忘れられがちなものまで入れてください。 矯正ならリテーナー。スキャナーを使うなら、その償却を症例数で割ったぶん。これを入れるか入れないかで、残る金額の見え方が変わります。
そして最後の列が大事です。同じだけ残るなら、短い時間で終わるほうが強い診療です。
これを並べると、「売上は小さいけれど、じつは利益の柱になっていた診療」が見つかることがあります。逆に、力を入れてきたのに、時間のわりに残っていない診療も見つかります。
ここまで出せてはじめて、「どれを増やすか」が決められます。そして、そのときの割合が、自院にとっての目標の数字になります。
数字は、決めるためにあります
目標の数字は、成績表ではありません。明日どうするかを決めるための道具です。
「30%に届かなかった」で終わる数字には、意味がありません。「30%に届かなかったのは、◯◯が足りなかったからだ。だから来月はここを変える」まで言える数字が、使える数字です。
先生の医院がいま追いかけている数字を、ひとつ思い浮かべてみてください。
その数字を達成したとき、医院にいくら残るか。そこまで言えるでしょうか。
マーケティング論を、体系立てて学ぶ
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