
評価面談を、次の一歩を決める場にする
評価も面談もしているのに、終わったあと決まって空気が重くなる。そういうご相談をいただくことがあります。丁寧に進めていらっしゃる院長先生ほど、多いご相談です。良いところから話し、直してほしいところは最後に添える。順番も配慮されています。それでも重くなるのには、別の理由があります。本人の見方を聞かないまま、院長の見立てから始まっているのです。
この記事の要点
- 面談が重くなるのは、順番ではなく、本人が自分をどう見ているかを聞かないまま始めるから
- 同じ評価表を本人にも渡し、自己評価を先に書いてもらう。話すのはずれた項目だけ
- 最後の五分で、次の三か月に上げる項目を一つ、本人に選んでもらう
人は、条件が整えば、自ら進んで責任を引き受ける。
マクレガーは、人が責任を避けるのは生まれつきの性質ではなく、置かれた条件の結果だと考えました。面談の最後に次の一歩を本人が選ぶ形にするのは、その条件を整える作業です。選ぶ場がなければ、責任の持ち方を覚える機会もありません。
面談のあと、空気が重くなる理由
ある医院の面談は、院長先生が評価を伝え、本人が聞く形でした。スタッフ十数名、年に一度、院長先生が一人ずつと三十分お話しになる。手を抜いていたわけではありません。
それでも重くなるのは、伝える順番の問題ではありませんでした。本人が自分の働きをどう見ているかを聞かないまま、院長の見立てから始まるからです。自分では手応えのあった仕事に触れられず、思ってもいなかった点を指摘される。これは、誰でも身構えます。
本人が知りたいのは、自分が何点なのかではありません。次に何をすればよいのかです。評価表は、その問いに紙で答えるための道具です。
面談を、その一つを決める場に変える。それだけで、同じ三十分の残るものが変わります。評価表そのもののつくり方は歯科医院の人事評価は、給与のためにつくらないで扱っています。
院長の見立てと、本人の受け取り方はずれる
ずれがいちばん大きく出るのは、目に見えにくい仕事です。器材の手入れ、新人への声かけ、片付けの段取り。本人は自分の働きの中心だと思っているのに、院長先生の口からは出てきません。
出てこないのは、見ていないからではありません。診療の腕のように目に入るものから話し始めると、そこで時間が終わってしまうだけです。ただ本人からは、「見てもらえていない」と映ります。
反対を向いたずれもあります。本人が低くつけている項目を、院長先生は高く見ている場合です。こちらは、伝えるだけで話が前に進みます。多くの方は、自分を低めにつけます。
面談で扱うのは、全部の項目ではありません。ずれている項目だけです。合っている項目を読み上げるのに時間を使うと、肝心のところに入る前に三十分が過ぎます。
自己評価を、先に書いてもらう
その医院で変えたのは、面談の前に同じ評価表を本人にも渡し、自己評価を書いてもらうことでした。新しい紙はつくっていません。院長先生がつけている紙と、同じものを渡します。
渡すときは、締め切りを面談の二、三日前にしてください。当日に書いてもらうと、思い出す作業になります。それから、書いた紙は本人が持って面談に来る形にします。先に提出させると、提出物になってしまいます。
書いてもらうと、この医院でも院長先生の評価のほうが高い項目がいくつも出てきました。面談の中身が変わったのは、そこからです。「そこはできていると思っていますよ」と伝わると、話が前に進みます。
評価表がまだない医院でも、この順番は使えます。項目を十五個までに絞った紙を一枚つくり、それを本人にも渡すだけです。評価の仕組みがないところから始めた医院の例はお悩み別の解決事例集にまとめています。
三十分の型をつくる
時間の使い方を決めておくと、話が横に広がりません。この医院で使っている三十分は、四つに分かれています。
最初の十分は、自己評価の読み合わせです。本人が書いた紙を、本人の言葉で説明してもらいます。院長先生は、この十分は聞く役に回ってください。ここで口を出すと、あとの二十分で本人の言葉が出てこなくなります。
次の五分で、院長先生の評価を出します。全項目は読みません。ずれた項目だけを示します。そのあとの十分で、なぜそう見えたのかを互いに話します。どちらが正しいかを決める時間ではありません。
残りの五分で、次の三か月に上げる項目を一つ決めます。この型にしてから、院長先生の言葉では「伝える場ではなく、確かめる場になった」ということでした。かける時間は、以前と同じ三十分です。
最後の一つは、本人に選んでもらう
型の中でいちばん大事なのは、最後の五分です。次の三か月で上げる項目を、院長先生ではなく本人に選んでもらいます。
院長先生が選んだ項目は、押し付けられた項目になります。同じ項目でも、選んだのが自分だと扱いが変わります。選んだ項目は、与えられた項目より続きます。
一つに絞ってください。三つ選ぶと、どれも始まりません。そして、次の面談の日を、その場で予定表に入れてしまってください。三か月後に確かめると決まっていると、選んだ一つが宿題として生き残ります。
この医院では、二回目の面談から、スタッフのほうから「次はこれを上げたい」と言うようになりました。評価表の値打ちは、点数ではなく前回との差にあります。入職からの受け入れとつなげる形は新人は、最初の90日で決まるでも扱っています。
よくあるご質問
自己評価を高めにつけてくる人がいたら、どうしますか?
そこが、いちばん丁寧に話すところです。本人が高く、院長先生が低く見ている項目は、期待の中身が伝わっていない印です。点を直させるのではなく、どういう状態をできていると見ているのかを、具体的な場面で話してください。
面談は年に一度でよいですか?
次の一歩を決める場として使うなら、三か月ごとか半年ごとをおすすめします。年に一度だと、決めた一つが宿題として残りません。一回の時間は三十分のままで構いません。回数のほうが効きます。
評価表がまだありません。面談から始めてもよいですか?
構いません。項目を十五個までに絞った紙を一枚つくり、それを本人にも渡すところから始められます。立派な制度をつくってから始めようとすると、いつまでも始まりません。項目は、あとから足せます。
この記事のまとめ
- 面談が重くなるのは、本人の見方を聞かないまま院長の見立てから始まるから
- 面談の前に、同じ評価表で自己評価を書いてもらう。締め切りは二、三日前
- 三十分を四つに割る。読み合わせ十分、ずれの提示五分、話し合い十分、決定五分
- 次の三か月で上げる項目は一つだけ。選ぶのは本人、次の面談日はその場で決める
この論点を体系的に扱うのが人材マネジメント論です。2027年3月28日(日)に開催します。
