
歯科診療所の損益率(公的データ)
「うちの医院は、残っているほうなのか」。決算書を見ても、比べる相手がいないと判断できません。国が2年に1度、歯科診療所の収支を調べて公表しています。令和7年11月26日に出た最新の結果から、自院と比べられる数字だけを取り出しました。
歯科診療所の損益率(令和6年度)
損益率は、医業・介護収益から医業・介護費用を引いて、収益で割ったものです。収益のうち何パーセントが残ったかを表します。
| 平均値 | 中央値 | 回答した施設数 | |
|---|---|---|---|
| 医療法人 | 5.5% | 3.4% | 134 |
| 個人 | 27.6% | 26.4% | 396 |
中央値は、全体を順に並べたときのちょうど真ん中にあたる医院の数字です。
出典 厚生労働省 中央社会保険医療協議会
「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)の概要」令和7年11月26日版
資料(PDF)を開く
収益には新型コロナウイルス関係の補助金を含みません
医療法人5.5%と個人27.6%を、そのまま比べてはいけません
この5倍の開きは、もうけの差ではありません。個人立では、院長の報酬にあたる部分が費用に計上されていないからです。資料にもそう明記されています。個人立の27.6%には、院長が受け取るぶんがまだ含まれたままなのです。
自院を比べるときは、同じ形の相手と比べてください。医療法人なら5.5%と、個人立なら27.6%と。形が違う医院の数字を並べても、何も分かりません。
個人立の院長先生がこの数字を使うなら、27.6%から自分の報酬として取っているぶんを引いてみてください。残った数字が、法人立と比べられる形になります。
4年間の動き
前回・前々回の調査から引いた数字も並べると、ここ数年で何が起きたかが見えます。
| 損益率(平均値) | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|---|---|
| 医療法人 | 9.0% | 8.4% | 5.4% | 5.5% |
| 個人 | 24.9% | 24.6% | 27.6% | 27.6% |
令和3年度・令和4年度は第24回調査からの引用です。
医療法人は令和4年度から令和5年度にかけて3ポイント下がり、そのまま戻っていません。8.4%が5.4%になるということは、収益1億円の医院で300万円が消えたということです。
平均は横ばい、真ん中は下がっている
| 個人立の歯科診療所 | 令和5年度 | 令和6年度 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均値 | 27.6% | 27.6% | ±0 |
| 中央値 | 27.1% | 26.4% | 0.7ポイント減 |
平均は変わらないのに、真ん中の医院は下がりました。上のほうが伸びて、下のほうが落ちると、こうなります。平均だけを見て「横ばいだった」と受け取ると、実際に起きていることを見落とします。
自院が平均より下にいるなら、同じ業界にいても別の流れの中にいる、と考えたほうが正確です。
収益100に対して、何にいくら出ているか
同じ調査に、費用の内訳も載っています。医療法人の歯科診療所の、令和6年度の数字です。医業・介護収益を100としたときの比率で表します。
| 項目 | 令和5年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
| 費用の合計 | 94.6 | 94.5 |
| 給与費 | 49.4 | 49.1 |
| 委託費 | 9.3 | 9.4 |
| (うち歯科技工委託費) | 7.7 | 7.8 |
| 歯科材料費 | 7.0 | 7.1 |
| 減価償却費 | 4.7 | 4.4 |
| 医薬品費 | 0.9 | 0.9 |
| その他の費用 | 23.3 | 23.5 |
「歯科技工委託費」は第25回調査から新しく設けられた項目です。
収益の約半分が給与費です。そして技工と材料を合わせると15%近くになります。この3つで収益の64%。残りの家賃・リース・水道光熱費などをすべて含めて94.5まで積み上がり、手元に5.5が残ります。
数字の大きいところから見るのが鉄則です。その他の費用23.5よりも、給与費49.1のほうが1ポイントの重みが大きい。ただし給与費は削ればよいものではありません。人に払ったぶんが売上になって返ってきているかどうかが問われます。考え方は歯科医院の人件費率は何パーセントが適正かにまとめました。
技工料と材料費は、医院全体でなく診療ごとに出すと動かせる場所が見えます。歯科医院の原価率の出し方をご覧ください。
自院の数字を、同じ形で出してみてください
比べるには、自院も同じ計算式で出す必要があります。入れるだけで出る道具を用意しました。登録は要りません。
数字を見たあとに、何を決めるか
損益率が低いと分かっても、下がった理由までは数字が教えてくれません。人を増やしすぎたのか、単価が下がったのか、自費が止まっているのか。理由を見つけて手を打つところからが経営です。2027年1月31日(日)から始まる組織設計論では、数字を決める人と決めごとの設計を半日かけて扱います。
