
権限を渡すとき、一緒に渡すもの
任せたのに、戻ってくる。
「この件、任せたよ」と伝えた。なのに数日後、同じ件が院長のところへ戻ってくる。任せ方が足りないのではなく、一緒に渡すものが抜けていることが多いのです。
「任せる」は一言では終わらない
任せるという言葉には、本当は4つの中身があります。何を決めてよいか。いくらまでのお金を動かしてよいか。誰に頼んでよいか。うまくいかなかったとき、誰が責めを負うか。
このうち一つでも抜けると、受け取った人は動けません。動けないので、確認に来ます。確認に来るので、院長の仕事は減りません。
「任せたのに戻ってくる」のは、相手の自信の問題ではなく、渡し方の抜けです。
いちばん抜けるのは「お金」と「責め」
現場でよく抜けるのは、金額の上限です。「必要なものは買っていいよ」と言われても、いくらまでかが分からなければ、結局聞きに来ます。1万円までは自分で、それを超えたら相談。これを決めるだけで、確認の回数は目に見えて減ります。
もう一つは、うまくいかなかったときの扱いです。任された人がいちばん恐れているのは、失敗したときに自分だけが責められることです。
「これは私が任せたことだから、うまくいかなかったら私の責めだ」と先に言っておく。この一言があるかないかで、動き方が変わります。
紙に書くと、渡したことになる
口で伝えた権限は、1週間で消えます。本人は覚えていても、周りが知らないからです。周りが知らないと「それ、院長に聞いた?」と言われ、本人は院長に聞きに行きます。
A4一枚で足ります。誰が、何を、いくらまで決めてよいか。これを貼る。あるいは全員に配る。それだけで、渡したことが医院の事実になります。
組織図を役職の並びではなく、この一枚として描き直す。これが組織設計のいちばん手前にある作業です。
渡したあと、3回は口を出さない
渡したあとに最も多い失敗は、院長が途中で引き取ってしまうことです。やり方が気になる。遅く見える。だから手を出す。
一度引き取ると、その人は二度と自分で決めません。次からは最初に聞きに来ます。
結果が出るまで3回は見る。そう決めてしまうほうが楽です。3回やって駄目なら、渡す相手か渡す範囲が違っただけで、本人の力の話ではありません。
この記事のまとめ
- 任せるとは、決める範囲・金額・頼む相手・責めの所在を渡すこと
- 金額の上限がないと、必ず確認が戻ってくる
- 「うまくいかなければ私の責め」と先に言う
- 口で渡した権限は1週間で消える。A4一枚で残す
- 渡したら3回は口を出さない
